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次世代PET装置開発プロジェクト
「SNM・Young Investigator Award」を受賞




重粒子医科学センター 医学物理部 任期付研究員 山谷泰賀

平成16年6月19日から23日まで開催されたSNM(米国核医学会)総会にて発表した、次世代PET装置開発プロジェクトに関する演題が、Computer and Instrumentation Young Investigator Award(コンピュータ・機器部門 若手研究者賞)に選ばれました。

本プロジェクトは、オールジャパンをモットーに産官学の連携により進めており、本受賞は、みなさまの貴重なお力添えの賜物であります。本プロジェクトのリーダーである村山秀雄室長をはじめ、関係者各位に感謝いたします。

「A First Performance Evaluation of A Novel Brain DOI-PET Scanner "jPET-D4"」と題した演題は、本プロジェクトで開発を進める世界初の4層DOI-PET装置について、プロトタイプシステムを構築し、次世代PET装置の分解能性能を初めて実験的に示したものです。検出素子内の深さ方向のガンマ線相互作用位置(depth-of-interaction, DOI)情報を検出できれば、素子を厚くしても斜め入射のガンマ線に対する位置検出精度の劣化を抑制できることから、分解能と感度を共に高めることができます。分解能が高いほどより小さい病変が検出でき、高い感度は、画像の定量性が高まることに加えて、検査時間の短縮や被ばく量の低減に役立ちます。これまでに米国CTI社によって開発された頭部専用研究用PET装置であるHRRTなどの2層DOI-PET装置では、分解能は良好ですが感度は十分ではありません。これに対して、jPET-D4と名付けられた我々の次世代PET装置は、4層のDOI情報を活用し、従来技術では達成し得ない画質を実現できると期待されます。

医用画像診断装置は、単なる計測器ではなく、ターゲットの物理量の空間分布および時間変化を、診断に有益な情報として出力するシステムです。よって、ただ計測する情報量を増やせばよいのではなく、得られた情報をどのように活用するか、システム全体として装置の性能を高めることが大切になります。そこで本研究では、正確な観測モデルに基づいた逐次近似型画像再構成手法を適用することによって、4層DOI情報を活かして良好な分解能特性を得ることに成功しました。画像再構成は、物体から観測データへの変換を表す観測モデルの逆変換に相当しますので、順変換の観測モデルを正しく定義することがポイントです。今後は、DOI情報の特性を考慮したデータ補正法の開発、観測データの増加に対する画像再構成計算の高速化、3次元さらには4次元画像再構成の実現などが課題です。

装置全体としては、平成16年度末までに全体の1/5の検出器をガントリに実装し、平成17年度末にjPET-D4の完成を目指します。jPET-D4は、高い性能レベルに加え、研究装置としてさまざまなアイディアをテストできる試作機ですので、ぜひこの特徴を活かし、工学者、医学者、薬学者、放射線技師などさまざまな分野の方に幅広くjPET-D4を活用して頂ければ幸いです。

次世代PET装置開発がスタートした4年前は、HRRT以外のDOI-PET研究開発は皆無の状況でしたが、今回のSNMでは、欧米のグループによって、小動物用2層DOI-PET装置(研究レベルで2種類、商用機で1種類)が発表されており、欧米の開発スピードの速さに大変驚かされました。本受賞を励みとして、jPET-D4を完成させることはもちろん、我々の4層DOI技術の発展・応用を目指したいと思います。

約300名の聴衆を前に発表する山谷任期付研究員
約300名の聴衆を前に発表する山谷任期付研究員

次世代PET装置"jPET-D4"のプロトタイプシステムと分解能評価実験
次世代PET装置"jPET-D4"のプロトタイプシステムと分解能評価実験


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