第45回日本核医学会総会におけるjPET演題
2005年(H17)11月11日〜13日
於 タワーホール船堀(江戸川区)
1III019 次世代PET(1)頭部用試作機jPET-D4の概要
村山 秀雄(放射線医学総合研究所 医学物理部)
放医研では2001年より5カ年計画で、高感度・高分解能を目指す次世代の頭部用PET装置“jPET-D4”を試作する。2003年には画像診断棟RI検査室にガントリーを搬入し、2005年5月の段階では、120個のDOI(Depth of
Interaction)検出器ユニットのうち3/5がガントリーに実装されており、8月にはすべての検出器ユニットが実装される。消滅放射線の同時検出ごとに検出事象の時間、エネルギー、位置を1レコードとして記録するリストモード方式でデータ収集を行う。1検出器リング実装時のファントム実験で、全視野内における空間解像度が3mm以下となることを示したが、今回は検出素子の深さ方向によって感度が異なる点を補正するソフトウエアを導入するなどして得られた装置の主要な物理特性について報告すると共に、試作機の改善すべき今後の問題点について分析を行う。
1III020 次世代PET(3)
jPET-D4システムの実装
佐藤 允信(放射線医学総合研究所 医学物理部)
次世代PET装置jPET-D4は4層DOI検出器を用いた頭部用のPET装置である。今回、4層DOI検出器をシステムに実装したので、その計測システムおよび計測結果について報告する。jPET-D4の計測システムは、検出器信号処理部、同時計数部、データ収集部および機構部からなる。検出器信号処理部では、個々の4層DOI検出器からの信号を処理しDOI情報の抽出および補正を行う。同時計数部では、システム全体に120個あるDOI検出器からの計測データを6並列で同時計数処理を行い、リストモードデータを作成する。データ収集部では、同時計数部からのリストモードデータを6並列で収集し、その後6分割されたデータの結合および時分割処理などを行う。機構部ではベッドおよび校正用線源機構の動作の制御を行う。そしてjPET-D4システムでは、各部分に独立に制御を行う機構を持たせ、1つのサーバを司令塔として全体を制御する。各部分の制御プロセスを個々に動作させることにより計測方法に合わせたカスタマイズが可能である。
1III021 次世代PET(4)
jPET-D4画像再構成と解像度性能評価
山谷 泰賀(放射線医学総合研究所 医学物理部)
従来にない高感度かつ高空間解像度なPETイメージングの実現を目指して、4層DOI-PET装置(jPET-D4)の試作を進めている。今回、一部の検出器を実装したjPET-D4試作機を用いて取得した実験データに、これまでに提案したDOI情報を利用した統計的画像再構成手法を適用し、jPET-D4の画質性能を示したので報告する。具体的には、DOI層数の2乗に比例して増加する膨大な計算コストを抑制するために、DOI-PET観測系の冗長性に注目しデータ次元数を削減するDOI compression
(DOIC)法に加え、近似化したシステムモデルを適用した。そして、ファントム実験およびボランティア計測を行い、jPET-D4の優れた解像度性能を明らかにした。今後、残りの検出器の実装を進め、高解像度に加え高感度の実現を目指す。
1VIII148 投影データを用いたjPET-D43次元画像再構成の速度評価
萩原 直樹(東京工業大学 総合理工学研究科)
放医研を中心として開発が進められている次世代PET装置(jPET-D4)はγ線相互作用位置の検出器内における深さ(DOI:Depth-of-Interaction)情報を取得することで、高分解能を保ちつつ高感度の実現を目指している。現在までに我々は再構成における計算コスト削減のため、検出器の感度特性を利用してリストモードデータを投影データ形式に変換する手法を提案してきた。これにより装置の感度均一性を生かしたまま、DOI検出による冗長性を削減できる。また物体を球対称な基底で表すことによりon-the-flyでの感度分布計算コストを抑え、フルスペックのjPET-D4においても現実的な時間での再構成が可能となる。本稿では一部のDOI検出器が実装されたjPET-D4実機による観測データから3次元画像再構成を行うともに、フルスペックでの再構成にかかる時間を報告する。
1VIII157 モンテカルロ・プログラムGATEによる次世代PETのシミュレーション
長谷川 智之(北里大学 医療衛生学部)
次世代PET研究における機器特性評価や擬似データ生成のために、これまでGeant3、Geant4、EGS4等、放射線の相互作用をシミュレートするための汎用モンテカルロ・プログラムを利用してきた。前回発表では、特にGeant4の視覚的解析ツールの有用性等について報告した。今回は、新たにモンテカルロ・プログラムGATEによるシミュレーションについて報告する。GATEは国際的なコラボレーションによりGeant4の枠組みの中に作られた、PET・SPECTシミュレーション用の無料ソフトである。直接にGeant4でプログラミングする場合と異なり、GATEではC++言語プログラミングを要しないというのが大きな特徴である。また、結果の出力・分析のためのツールも準備されている。GATEは、従来の汎用モンテカルロ・プログラムに比べ非経験者に対する敷居が低いため、次世代PET装置開発に限らず、本国におけるPET・SPECT装置に関する研究に有効である。
2III173
PET・蛍光同時イメージングが可能なDOI検出器の基礎検討
稲玉 直子(放射線医学総合研究所 医学物理部)
PETと蛍光の同時イメージングを可能にする装置は、分子イメージングの研究において新たな展開を生み出すものとして大きな期待がよせられる。そのような装置の実現には、まずγ線と蛍光の同時検出を行うことができる検出器の開発が必要となる。我々は、小動物PET用検出器として深さ位置情報を得られる検出器(Depth of
interaction; DOI検出器)を考案し4層DOI検出器の試作に成功した。被検体に検出器を近接させたPET撮像を可能にするDOI技術は蛍光イメージングとの併用を考えた場合非常に有利となる。このDOI検出器で蛍光を検出する場合シンチレータをライトガイドとして扱い蛍光も同じ受光素子で検出することになる。本発表では、GSO結晶で試作した4層DOI検出器を用いて、PET用検出器としての性能を保ちつつ蛍光も検出するための方法を検討し、PETと蛍光の同時イメージングを実現する検出器の可能性を示したので報告する。
2III175 小動物用高感度PET装置"jPET-RD"開発における1ペア実験システムの構築
津田 倫明(千葉大学 自然科学研究科)
高感度と高分解能を共に満たす小動物用PET装置(jPET-RD)のための検出器として、我々の研究グループは4層の深さ位置感応型(DOI)検出器の開発研究を行っている。本発表では1ペアのプロトタイプ検出器を用いて性能評価実験を行ったのでその結果を報告する。プロトタイプの4層DOI検出器は1.4 mm x 1.4 mm x
4.5 mmのLu2xY2(1-x)SiO5結晶素子を32 x 8に配列し4層に重ね合わせた結晶ブロックと、256ch位置弁別型光電子増倍管を光学結合させたものから成る。結晶ブロック内の各層の反射材構造が異なっていることにより、光子の動きをコントロールすることができ4層の位置弁別を可能としている。なお本研究の一部は、島津科学技術振興財団および平成17度科学研究費補助金若手研究B (課題番号17700418)の助成を受けて行われた。厚く御礼申し上げる。
2III178 サポートベクタマシンを用いたイベント毎の偶発・散乱同時事象の識別方法の検討
吉田 英治(放射線医学総合研究所 医学物理部)
PETにおける消滅放射線の入射角度は同時計数判定によって行われる。しかし同時計数事象は偶発・散乱同時計数を含んでいる。これらの事象は雑音等価計数(NEC)を低下させる。遅延同時計数等の従来法では減算時にノイズ成分の統計誤差がNECをより低下させる。本研究ではNECを向上させるために同時計数事象をイベントごとに識別することを目的とする。マルチアノードPMTにおいて消滅放射線が検出器内で複数相互作用した場合、アノードに付与されたエネルギー分布は入射角度に依存する。本手法はモンテカルロ計算によってポジトロン核種からの2本の消滅放射線の検出器内での挙動をシミュレートし統計的パターン認識で多用されるサポートベクタマシンに真の同時計数か偶発・散乱同時計数かを学習させる。本識別手法は他の手法に対して高い能力を有し、境界が不明瞭なデータでも汎用性を失わず識別できるため本手法に適している。簡易シミュレーションで本手法の識別能力を検討した。
2VIII278 8層DOI検出器の提案
濱本 学(早稲田大学理工学研究科)
3次元放射線位置(DOI)検出器は、空間分解能性能を維持したまま検出器を測定対象に近づけて感度を高められるため、DOI層数を増やすことによって、小動物専用PET装置や部位別PET装置などの実現が期待される。我々はこれまでに、まず、結晶間に挿入した反射材の位置で光の伝搬を制御し、γ線が相互作用した結晶素子を識別することで4層分の深さ位置識別を行う方法を提案している。今回、波形弁別によって2種類の結晶を弁別する方法と組み合わせることによって、世界で初めて8層のDOI弁別を実現したので報告する。具体的には、Ce濃度の異なった2種類のGd2SiO5結晶(GSO)による波形弁別で4層を各々2分割し、8層分深さ位置識別に拡張する。そして、8層DOI検出器として2.9 mm x 2.9 mm x
3.7 mmのGSO結晶素子を10 x 10に配列して1層とし、これを8層に重ね合わせた結晶ブロックと、256ch位置弁別型光電子増倍管を光学結合させたものを試作し性能評価実験を行った。
2VIII280 高分解能DOI検出器によるマンモPET装置の検討(1):
感度と計数率特性の解析
北村 圭司(島津製作所 医用機器事業部)
PETによるがん診断は広く普及しつつあるが、ごく微小ながんの検出にはさらなる分解能が求められている。S/N比を維持したままで解像度を向上させるには、飛躍的な感度向上が必要となるため、できるだけ対象部位に近接させて検出器を配置する方法が有効である。その場合、斜め方向に入射するガンマ線の数が増大するため、超高感度と高解像度を両立させるDepth Of
Interaction(DOI)検出器を利用する。一方で近接撮像ではガンマ線の入射頻度が増大するため、検出器の計数率特性を向上させる装置設計が求められる。そこで本研究では、早期診断が特に重要とされる乳がんを対象として、放医研で開発中の高分解能DOI検出器を応用した近接撮像型のマンモ用PET装置の実現可能性を検討した。モンテカルロ・シミュレーションによって感度と計数率特性を計算し、装置設計に必要なパラメータ(検出器の形状と幾何学配置、検出器回路の数や処理速度など)について検討した結果を報告する。
2VIII281 高分解能DOI検出器によるマンモPET装置の検討(2): 空間解像度特性の解析
山谷 泰賀(放射線医学総合研究所 医学物理部)
放医研を中心にして開発した3次元放射線位置(DOI)検出器は、近づけても高い解像度性能を維持する要素技術である。本研究では、このDOI検出技術を応用し、測定対象に検出器を密着させて解像度と感度を究極的に高めた部位別PETイメージングの実現を目指す。今回、乳がん診断を対象とし、計算機シミュレーションによる空間解像度性能予測を行い、検出器の配置やDOI層数の検討を行ったので報告する。具体的には、検出器応答性能を組み込んだ解析的なシミュレーターを構築し、統計的DOI-PET画像再構成手法を適用し、ノイズと空間解像度のトレードオフ、空間解像度の一様性、検出器ブロックのギャップの影響などを評価した。
2VIII282
DOI Compression法を応用した3次元DOI
PET装置の要素別感度補正法の検討
北村 圭司(島津製作所 医用機器事業部)
多層のDepth of Interaction(DOI)検出器を用いたPET装置では、各素子の感度が結晶ブロックの断面方向のみならず深さ方向についても大きく異なるため、全ての素子に対して十分な統計精度の感度補正係数を得ることが難しくなる。そこで我々は、多層のDOI-PETデータを少数のDOIペアに束ねる手法(DOI compression:
DOIC法)と要素別感度補正法を併用することで、補正係数の統計精度を改善する方法を開発し、2次元のDOIデータで効果を実証してきた。今回、本手法を放医研で開発中の頭部用の4層DOI-PET装置(jPET-D4)の3次元DOIデータに拡張し、3D DOIC法による仮想検出器データ生成と3Dの要素別感度補正法、特に3D fan sum法による仮想固有検出感度の計算とその統計精度評価を行った。その結果、3D-DOI PETにおいても円筒線源を短時間測定することで定期的な感度補正が可能になり、感度補正係数の容量も大幅に削減できることが示された。
2VIII284 次世代PET(2)4層DOI結晶ブロック組み立て方法と性能評価
小野 裕介(千葉大学大学院 自然科学研究科)
高感度と高解像度の両立を目指すjPET-D4は120個のDOI検出器で構成され、各検出器は、2.9 mm x 2.9 mm x
7.5 mmのGd2SiO5結晶(GSO)を16 x 16に配列し4層に重ね合わせた結晶ブロックと、256ch位置弁別型光電子増倍管から成り立つ。結晶素子は、Ce濃度の異なったGSO結晶による波形弁別と、結晶間の反射材挿入位置の工夫で光の広がりを制御することにより位置弁別される。ここで、1024個の微小な結晶素子を高精度かつ効率的に組み立てることが重要である。我々は、反射材のレーザー加工と専用設計の治具による組み立て法を考案し、1つの結晶ブロックを精度良く約3時間で完成できるようになった。今回は120個の検出器ブロックを組み立て、性能を評価した。具体的には、波形弁別性能、エネルギー分解能、光量を評価し、結晶ブロックの性能が均一であることを示した。